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イドムくんの危うい1日  その6

いどむ21 50%






夜9時のNHKのニュースをしばらくながめてから、イドムくんは嫌がる体を無理やり動かし、階段を下りていきました。



そしてお父さんに遭遇しやしないかとヒヤヒヤしながらも、乏しい勇気を振り絞って、こっそり台所から夕飯と夜食用のパイの実のファミリーパックをむしり取ってきました。



部屋に戻ったイドムくんが、カツカレーを獣のように食べ散らかしながら、適当にチャンネルを回していると、女子バレーボールがやっていました。






  ・・・おお・・・久しぶりだな、全日本女子か・・・


  この試合は何だろう・・・たぶんワールドカップか世界選手権だと思うんだが・・・


  さすがにオリンピックだったら、いくらひきこもり属性の僕だって気づくはずだからな・・・




  ・・・と言いつつ実はオリンピックだったりして・・・


  ありうるな・・・僕なら十分・・・


  僕の脳は生きながらにしてしてすでに腐敗してるようなもんだからなあ・・・


  ほんとは最初っから僕の頭には脳のかわりにヘドロとかが偽装で詰められてたんじゃないのかな・・・






女子バレーは、イドムくんが興味ある数少ないスポーツの1つなのです。



しかしイドムくんは、ある事情により、この競技観戦を100%心から楽しむことができないのです。






  ・・・おっと、音を下げないとな・・・危なかった・・・


  もうちょいでヤバかったな・・・焦ったよ・・・




  ・・・しかし、これさえなければなあ・・・


  音を普通に出さないと、解説がほとんど聞こえないから楽しさ半減だよ・・・


  残念というか何というか・・・


  何で僕だけこんな異常感覚に苦しまなくちゃいけないんだ・・・




  ・・・いや、もうそれは考えないことに決めたはずじゃないか・・・


  どうせまたこれも僕が悪かったんだよ・・・理由はわからないけど・・・






イドムくんの言うところの異常感覚とは、ある種の音に対して、体と精神が強烈な悪寒などの拒絶反応を起こしてしまうことなのです。



具体的には、ゴム系の「キュッ!」という摩擦音や、発泡スチロールをさわったり削ったりした時に出る「キーッ!」という音などです。



たとえ音が出なくても、ゴムや発泡を触った時の感触だけでも、もう相当にギリギリめいっぱいなので、トータルで考えると、この音問題だけで、自動的に日常生活のかなりの部分が制限されてしまうことになってしまうのです。



他にも金属系の摩擦音などにもかなり反応してしまうのですが、その種の音に不快感を持つ人は世間一般にもある程度いるようなので、自然に音の出方が多少抑制されているのか、イドムくんが何とか耐えられる程度に絶対量が少なめなのです。



ところが世の中では、ゴムや発泡系の音を嫌がる人がまず存在しないためか、この手の音はあたりまえのように大量に世間にあふれているため、イドムくんの音に関する恐怖や警戒の対象はゴム&発泡系がメインになっているのです。



バレーボールの場合は、シューズと床がこすれる音が絶対的にダメなのです。






  ・・・しかしなあ・・・なんでみんなあの音が平気なんだ・・・


  雨の日のコンビニの中なんて、濡れたスニーカーとかのこすれる音で、とてもじゃないけど1分も正気では耐えられないんだが・・・  


  あの音がダメだから、僕なんか底が固くてすべりやすいビジネスシューズしかはけないくらいなのに・・・




  この音問題のせいで完全に人生狂ったよ・・・ 


  まあ、もちろんこれだけが原因で社会に適応できなかったわけじゃないけど、これの扱いには本当に苦労させられたよなあ・・・って、今でも現在進行形なんだが・・・


  こういう症例があんまり無いらしいから、精神科の先生も対応しようがないみたいだったし、当然僕自身もどうにもやりようがなくってさ・・・


  結局そのままずるずると克服できないまま、気がついたらこんな37才にまでなってしまってたってわけだ・・・


  まさに欠陥品の鏡・・・絵に描いたように完璧な失敗作だよ・・・








  ・・・この問題の一番恐ろしいところは、誰にも理解不能ゆえに、当然のごとく誰にも同情されず、ただひたすら自分一人で問題を抱えてのたうちまわりながら、えんえんと単なる無能とか怠け者扱いされることに耐え続けなきゃいけないってとこなんだよな・・・


  悩みを共有できる人が皆無ってのは、やっぱり僕程度の忍耐力では厳しすぎたよ・・・


  お父さんとお母さんですら、「いったいこの子は何を言っているんだろう」とか「言ってる意味が全然わからない」って感じだったからなあ・・・



 
  やはり相談なんかするんじゃなかったよ・・・ いや、別に人のせいにする気は全くないんだけどさ・・・




  全部僕がいけないんだよ・・・ 最初っから僕が生まれなさえしなければ・・・


  もっと人生の序盤とか、早期の段階で鋼の意思をもって己を無に帰しておけばなあ・・・






イドムくんがこの音問題についてはっきりと自覚したのは、中学に入った直後からです。



それまでも、子供ながらにばくぜんとした違和感を感じてはいたのですが、小学校時代は生活していく上でそれほど支障が無かったためか、あまりとりたてて音問題を意識する必要は生じませんでした。



しかし、イドムくんの中学では、体育の授業を体育館で受ける時には、全員共通の上履きを履かなければならなかったのです。



この上履きのグリップ力はバッシュ並みにものすごく、これをはいて体育館を走ったり止まったりすると、ゴム系の摩擦音が全開で出まくりで、それがクラス全員でとかになると、もはやイドムくんの人並みはずれて脆弱な精神力ではとても凌ぎ切れるレベルではなかったのです。



この段階で、イドムくんの音に関する異常感覚は一気に全開放されてしまいました。






  ・・・この音問題さえなければ、僕の人生もうちょっと何とかやりようがあった気がするよ・・・


  こいつは本当に対応のしようがないんだよなあ・・・


  わざと鼓膜を完全に潰して、聴覚を破壊するくらいしかおそらく対処方法はないだろう・・・


  自分なりにむりやりにでも慣れさせようとして、ゴム音が出まくってる状態の雨の日のコンビニとか書店で、気が狂いそうになりながらも気合いだけで限界まで我慢して、店内に居続けたりしたこともあったけど、そんな力まかせの修行では全然ダメだったしな・・・ 




  ああいう無意味な努力をどれだけやったことか・・・ 


  ほんとに時間と体力と精神力の無駄だったよ・・・ まさに徒労・・・ 


  僕のウンコを純金に変化させる努力でもしてたほうがよっぽど可能性があったよ・・・ 

 
  もっと早い段階で見切りをつけて、克服は絶対不可能だとあきらめていれば、あんなにムダな苦悩を30年以上も繰り返さなくてすんだのにな・・・


  世の中には克服しようとしても、できるものとできないものがあるんだよなあ・・・


  いやというほど思い知ったよ・・・




  ・・・しかし、あの音問題をなんとかしなければ、僕の人生は事実上終わりだということを、当時の僕も若いながらに何となくだろうけど感じ取っていたんだろうな・・・


  だからあそこまで、死に物狂いで正体不明の症状に挑んでいたんだよな・・・


  結局、あれだけ必死こいて頑張っても、こうやって底辺以下のゴミ人生になってしまったわけだがなあ・・・






イドムくんの音への異常反応の正体はまだ依然として不明のままです。



もしかすると音問題は、単なる表面上の現象であって、真の問題はコミュニケーション能力の病的な欠如にあるのかもしれないと、イドムくんは仮説をたててみたこともあったのです。



しかし仮にその説が正しかったからと言って、もともと対人関係能力がぶっ壊れた状態でこの世に出荷されてしまっているので、今さらどうにも手のうちようがないのでした。






  ・・・いいんだよ、もう別に・・・


  僕の人生なんて、映画でいえばストーリーが全部終わって、すでにエンドロールが流れてる段階なわけだし・・・


  あとはいかにまわりにかける負担と迷惑を最小限に抑えるかだけを考えて、ひたすら息を殺して小さくなっていればいいんだよ・・・




  いっそのこと本当に小さくなってくれればなあ・・・


  できればミジンコとかアオミドロくらいが理想なんだが・・・


  そうなれば、もうこのキモくて見苦しくて目障りな姿を誰にも見られなくてすむし、他の生物のエサになることで少しは誰かの役に立てるもんな・・・








  ・・・って、いつもこれだ・・・


  また妄想が始まったよ・・・


  つまるところ、40年近くも生きてきて、僕がやれることは現実逃避と大きいほうの拡大再生産とあやしい液を飛ばすことだけか・・・


  我ながらすさまじいラインナップだ・・・


  もう虚しいを通り越して、自分で自分が許せないよ・・・


  やたら深刻ぶって、自分だけが不幸みたいな顔してるけど、実態は単に両親におんぶにだっこで甘えてるだけのくせになあ・・・

 




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genre : 心と身体

tag : ひきこもり ダメ 無能

comment

Secre

こんばんは

言われてみると確かに嫌な音ですね。言われて気が付くくらいなので、普段気になってないとも言えますけど。
パイの実を食べてみたくなりました。懐かしいです。ロッテ、パイの実ですね。
女子バレーが好きなど、毎回、少しずつ趣味嗜好が表れるので、飽きずに読むことができます。
しかしながら、毎回、ある意味、ネガティブな自己催眠をかけているかのようにも思えます。
たまには楽しかった出来事も振り返ってみるのもいいかもしれません。

No title

発砲スチロールがこすれる音って嫌な人多いと
思いますよ。
他にもガラス製のテーブルに物を置いたときの
ガチャガチャいう音や、ホーローの鍋に蓋をした
時に出る何とも不快な音とか、いろいろありますよ。
私は新築のマンションに入居しているのですが
うちのマンションの換気扇の音がうるさいとの
苦情が何度か入り、とうとう換気扇の排出口みたいな
ところがプラステックの長いカバーで塞がれてしまいました。
そのほかにも、掃除機や洗濯機などの生活音がうるさい
との苦情が何度か寄せられており、ちょっと不快です。
うちのマンションには、ペットを飼っている人もいないし
大音量で音楽を聴いているような人もいないし、そんなに
問題があるとは思えないのですが。。。

初めまして。

初めまして。

"イドム"さんの言う事も解ります。嫌な音ってありますよね。逆に好い音もあると思います。それは、耳が機能して、聞こえるからです。おかしな云い方ですか?・・・私の妹の子供(22)は、生まれた時から耳が聞こえませんでした。これはきっと遺伝のせいだと思います。私の母の兄弟に、やはり耳の聞こえない人がいました。もう、母も、そのおじさんも亡くなっていますが。で、耳が聞こえないという事は、話せないって事なんです。・・・
嫌ですよね、人間の身体って。音が解らないと、自分が発する声が解らないから話せなくなるって、1つの支障がもう1つの支障を作るんです。生まれた時から、風の音、動物の鳴き声、楽しい音楽、それと、危険な音、危険を知らせる音、も聞こえないのです。自転車でさえ、後ろからベルを鳴らされたって気が付かないのです。私だったら、我慢できないでしょう。でも、彼は頑張ってきました。手話、補聴器を使って何とか声が出るように成りました。私には、まだ良く聞き取れません。それは彼とあまりコミニケーッションを取ってこなかったからだと思います。もちろんお父さん、お母さんの努力も、想像以上に大変だったと思います。でも、私は、何もしてこないし、これからも出来ないと思う。
もちろん私だって、嫌な音もある、好きな音もある。でも、嫌な音より好きな音の方がたくさんあります。音が聞こえてきたから、話もできる。・・・・・
ここまで書けば、イドムさんなら私の言いたい事が解ると思います。だからといって、今のイドムさんの生活を否定してる訳でも無いのです。人、それぞれ事情もあるし、思い方もちがう。生き方だって違ってくるのは当たり前です。何が異常で、何が正常かなんて、誰も決められませんから。

初めての訪問で、勝手な事を書きました。つまらん奴とか、嫌な奴とか、面白い奴って思ったりしたのでしたら、イドムさんに少しは刺激を与えたって事ですね。これからも、時々おじゃまします。まだ全部観てないから、少しずつ観させてね。

初めまして

何気なしに「ゴムの擦れる音恐怖」で検索してみたら貴方のブログにたどり着きました。


「なんとか働く→続かない→引きこもる→…」を繰り返す29歳雄、独身で御座います。



貴方のように過敏かではないかもしれませんけれども、
実は私もゴムの擦れる音は大嫌いなんです!
貴文を読んだだけで背筋がゾクゾクし、頭の中がギュンとなりました…


黒板を掻き毟る音なんぞは比較的平気なんですが、
ゴム!
アレは、いかん!

風船の"ギュッギュッ"て音…この世で一番恐ろしいです。

「ああ、同じく世にはゴム擦れ音恐怖の人がいるのだなあ~」と、
勝手ながら奇妙なシンパシーを感じ一方的にコメントしてみました。


貴文を読み何故か元気が出ました


ありがとう
プロフィール

武者駆車師弟太

Author:武者駆車師弟太

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