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イドムくんの明日が見えない1日  その1

いどむ24  50%






かすかな尿意を感じるたびに、いちいちふとんから出てパンツを下ろし、ヤカンのふたを外して真上から大胆にチンポを突っ込み、膀胱に力をこめて、大してたまってもいない尿を全力で絞り出し、再びふとんの中へモゾモゾと戻ってゆく・・・



一つ一つのアクションは小さなものなのですが、これが一晩に数十回も繰り返されるとなると、トータルではそれなりの運動量になってしまいます。



結果的に、これらの一連の限りなく無意味に近い行動の積み重ねによって、疲労がだんだんとたまってゆき、それによって多少とはいえイドムくんは睡眠をとれているのです。



そして、排尿のし過ぎで膀胱がズキズキと痛み始めるまでになってきたあたりで、ようやく何十分かのまとまった眠りが得られるのでした。






  ・・・うう、膀胱さんが・・・またトイレを要求しているよ・・・


  いったい1日何十回行けば許してくれるんだ・・・


  へたしたら100回超えてるよ・・・

 

 
  ・・・もうかなり明るいな・・・今何時だろう・・・


  11時か・・・しょうがない・・・


  だるいけどそろそろ起きるか・・・






イドムくんは、いつものようにお父さんの影にビクビク怯えながら、1階に下りてトイレに行き、ヤカンの中の尿を捨てて、ゴミと汚れた食器を台所に不法投棄し、かわりに食糧を無断で奪い取ってきました。



そしてご飯を惰性でパクパク食べながら、とろんとした目でボーッとテレビをながめていると、日雇い派遣問題のニュースが流れていました。






  ・・・そういや僕もこの手のバイトはけっこう行ったよなあ・・・


  当時は派遣ていう言い方はあんまり無かった気がするけど・・・


  あのころは登録制とかそんな感じだったような・・・


  anで短期とか、日払い週払いとかを探すと、たいていこういう仕事ばっかりだったんだよなあ・・・


  いわゆる作業系というか肉体労働系というか・・・








  ・・・あああ、思い出しちゃったよおおお・・・ 


  せっかく今までなるべく考えないように気をつけてたのに・・・








  ・・・いちいち朝早くにコンビニに行って200円とか出して買ってたんだよな、あの雑誌を・・・ 
  

  また、あの200円が毎回毎回痛くてなあ・・・


  確か月曜と木曜に出てたんだよ・・・ 


  で、当然のごとくいっしょにフロムAも買うわけで、両方合わせるとなんと週に800円だから、あれはさすがに無職とか極貧フリーターには大き過ぎる出費だったよな・・・


  でもあのころはネットなんて無いし、それを買わなきゃバイトを探しようがなかったからなあ・・・


  どうしてもお金の無いときは、コンビニで勇気を出して人目を気にしながら、店の大迷惑を承知で無理矢理立ち読みで探して、電話番号と住所をボールペンでコソコソ手にメモしてっていう外道な技も、やむにやまれず何回か使っちゃったけど、 あれは限りなく犯罪に近い行為ゆえに多用は不可能だったからな・・・ 


  いや、近いっていうか、犯罪そのものか・・・


  まあ、そもそも僕という存在自体が凶悪犯罪なんだけどさ・・・


  本当に昔から最低もいいとこだったよな、僕ってカス野郎は・・・ 
 
 






  ・・・求人誌なんて、今は無料でいろんなとこに置いてあるけど、まさに時代は変わったなって感じだよ・・・


  僕ももう37才だしな・・・


  ということは、あれから15年もたってるわけか・・・ 


  いくらなんでもそれってちょっと早すぎじゃあ・・・ 


  信じがたいよ・・・浦島太郎ってのはこんな気分だったのかもな・・・


  ああいうフリーペーパーは、たまーにコンビニとかでもらってきて、お父さんに「ちゃんと仕事探してますよ」的な姑息なアピールをするために、わざとゴミにまぎれこませてさりげなく台所に置いといたりしてるけど、実際に中を開いて見ることは皆無なんだよなあ・・・




  って、そんなくだらない小細工をするような余力があるんなら、普通にページをめくってバイトを探せって話だよな・・・


  それはそーなんだよ・・・確かにそのとおり・・・ 


  イヤというほど身にしみて自覚してるよ・・・僕がダメの頂点を極められるほどの器だってことはさ・・・


  正真正銘何の意味も存在価値も無いんだよ・・・




  ・・・昔もあの手の雑誌を見る作業は、苦痛で苦痛でしょうがなかったけど、今は表紙を見ただけで、冗談じゃなく体に震えがくるくらいだからなあ・・・


  たぶんもう、完全に労働を拒絶しちゃってるんだろうな・・・体も精神も・・・








  しかし、よくフリーターとか派遣とかの非正規社員の人たちが、正社員よりもはるかに格下みたいな扱いをされて、バカにされてるっていう話を聞くけど、どんなバイトもまともに勤まらなかった僕なんかからしたら、信じられないことだよ・・・


  バイトだろうが派遣だろうが、その会社に貢献して、利益をもたらして、その対価として給料をもらえていることは事実なわけだからなあ・・・


  そうやって普通に働いているというその一点だけで、僕みたいな何のとりえもない無能からしたら、あまりにも立派すぎて、とてもじゃないけど近くに寄れないくらい輝いている存在だよ・・・


  ・・・まあ、非正規で今現在がんばってる人たちからしたら、僕みたいなゴミ以下の欠陥品ごときにわかったようなこと言われたくないって感じだろうけどさ・・・






ニュースによると、日雇い派遣大手の会社が、違法な行為をしていたことが明るみに出て事業停止処分を受けたとのことでした。






  ・・・昔ここの登録に行ったことあるような気がするよ・・・


  そういや最近はたしかケータイが無いと、ここは登録もできないようなシステムに変わっちゃってるって、どこかで聞いたことがあるな・・・  


  ケータイなんて上流階級のぜいたく品は、生まれてから一度も持ったこと無いよ・・・


  てゆーことは、今の僕では登録すらさせてもらえずに門前払いなわけだ・・・


  いや、すでに事業が停止しちゃってるってんだから、別にどうでもいいことか・・・




  確かに法律違反はまずいけど、僕みたいな能無しからしたら、雇ってもらえるだけでも正直大感謝だよなあ・・・


  まあ、たとえ日払いという条件であっても、今の廃人同様の僕を採用するほど、人を見る目の無い会社なんてまずありえないだろうし、運良く何かの間違いで採用になったって、僕の能力があまりにも向こうの予想を超えて低すぎて、全く使い物にならないから、どうせまたすぐ辞めざるをえない状況に追い込まれるのは目に見えてるよ・・・








  ・・・昔フリーターだった頃は、とりあえず20才前後で意味も無く若かったから、名前さえ書ければ誰でも入れることで地元では有名な高校を中退した僕程度でも、何とか採用してくれるバイトが頑張って探せばちらほらあったけど、今のこの人間失格状態じゃなあ・・・さすがにちょっとな・・・


  僕の場合、はっきり言って、募集に応募するだけでもその会社を侮辱しているに等しいからなあ・・・


  会社側からしたら、「こんなクソみたいなヤツが万が一にも受かるかもしれないと思ったほど、うちの会社はいいかげんでメチャクチャだと見られてるのかッ!」って感じだろうし・・・








  僕がバイトしてた頃は、いわゆるバブル景気の時期だったから、僕みたいなひきこもり属性のダメ人間の手も借りたいくらい、人手が足りない会社はそんなにめずらしくなかったんだよなあ・・・


  だけど今みたいな不景気に、こんな産業廃棄物以下の下等生物をわざわざ雇うメリットなんて、常識で考えたら何一つあるわけないからな・・・


  まあ、取引先とかお客さんに意図的に損害を与えて、会社の業績を悪化させて、経営陣を交代させたりするために、わざとこういう無能を雇うとかなら、ありえるかもしれないけどさ・・・


  そんな非現実的かつ特殊な募集が求人誌なんかに載ってるわけないもんなあ・・・


  逆に考えると、そういう用途くらいにしか僕は使い道が無いってことだ・・・

  
  現実的には今さらバイト探しなんてもう、わざわざやってみるまでもないというか、考えてみることすらムダだろう・・・




  だいたいあの三流と言われていた高校の授業ですら、1年の1学期の時点でもう、全くついていけなかったのが僕なんだから、僕自身の性能は少なくとも一般の人達のランクでいえば間違いなく四流とか五流以下なわけだ・・・






イドムくんは、どういうわけか小さい頃から、理数系の能力が一般の人たちに比べて極端に劣っていたのです。



小学校時代は何とかごまかしながらかろうじて凌げたのですが、中学に入ったとたんに、いきなり数学で派手につまづきました。



イドムくんがまずひっかかったのは、正負の数というところで、1-3=などという小さい数から大きい数を引くという思考がなぜかなかなか理解できなかったのです。



中学校は義務教育だったので、何とかお情けで卒業できたのですが、さすがに高校ではそこまで甘い対応はなく、しょっぱなの三角関数に手も足も出ないまま、イドムくんは失意のうちに高校を中退することとなったのでした。






  ・・・あああ・・・思い出しちゃったよおおお・・・ 


  だから昔のことを考えるのはやめろっていってるのに僕の大バカヤロオォォォ・・・




  あのときは、やっぱり数学が決定的にダメだったんだよな・・・


  サインコサインとかいうやつだ・・・ 


  三角関数だったかな・・・あれがもう全然何がなんだかさっぱり意味がわかんなくて・・・ 
 

  あそこでもう、完全に自分はバカなんだと、はっきり確信したんだよなあ・・・ 








  ・・・あれはつらかったよ・・・


  情けないというかみじめというか・・・ 


  お願いだから誰か僕を今すぐ抹殺してくださいって感じだったな・・・


  ふつうに頑張れば、たぶんほとんどの人がどうにか理解できるであろうことが、自分だけどうやっても全くわからなかったわけだからなあ・・・


  そりゃショックはでかいわな・・・


  でもあれは、こと勉強だけの問題じゃなくって、結局仕事とか人間関係とかその他いろいろ人生全般に関しても、僕はあらゆる面においてぶっちぎりで標準以下だったんだよな・・・




  やっぱり僕みたいな何の価値も無い粗大ゴミは、最初っから生まれてこなければよかったんだよなあ・・・


  僕自身のためだけじゃなく、人類の発展のためにも、地球の未来のためにも、宇宙の平和のためにも・・・ 




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イドムくんの明日が見えない1日  その2

いどむ25  50%






イドムくんは何かを考え始めると、常に悪い方向にしか思考が働かないので、極力毎日、何も余計なことを考えないように、自分でも心がけてはいるのです。



しかし、まともに体を動かすことがほとんど無いためか、知らず知らずのうちにイドムくんの意思に反して脳が勝手に、どうでもいいことを次々に考え始めてしまうのです。



あまりにも長期間にわたって無職生活が続いたためか、今では1つのテーマについて、まとまった思考をするということがほとんどできなくなってしまっており、一日中、断片的な考えがランダムに浮かんでは消え・・・の繰り返しだけしかありません。



しかもその発想や過去の回想の全てが、ネガティブなものばかりなので、イドムくんは考えれば考えるほど、ますます心を病むばかりで、今ではどんどんカリスマ廃人への道を突き進んでいく一方なのです。






じょぼじょぼじょぼ






  ふうー・・・まあまあ出たか・・・






イドムくんは起床後、食料を奪取してくる時に、900mlの元充実野菜のペットボトルに水道の水をくんでおいて、それを翌日の昼までに全部飲むようにしています。



以前は頻尿対策で、飲む量を極限まで制限していたこともあったのですが、それによってトータルの尿量は抑制できても、尿意を抑えることが全くできないために、トイレに行く回数はほとんど変わらなかったので、今では健康の方を重視して、水分を十分に取るようにしているのです。






  しかしこんな無職のひきこもりが、健康なんて気にしてどうするんだよって感じだよな・・・


  むしろできるだけ早く死にたいくらいなのに。


  とはいっても、もし重病になったりして、手術とか入院とかしなきゃならなくなったら、またお父さんとお母さんに、多大かつ無意味なお金を使わせてしまうことになっちゃうわけだからなあ。


  その展開だけはダメだ・・・ 絶対に何が何でも避けねば。


  今でさえ十二分に金銭的にも精神的にも迷惑をかけまくっていて、心苦しいなんてもんじゃないのに、さらにこれ以上の大損害を与えるなんて、申し訳なさ過ぎるよ・・・ とてもじゃないけど耐えられない・・・




  でも、まあ、そういう状況になったらなったで、自殺に踏み切る強力なきっかけにはなるだろうから、むしろそっちのほうがいいのかもしれないな。


  今のままじゃ、ぼくのせいで、ただダラダラと一家共倒れへのカウントダウンが進んでいくだけだからなあ・・・




  やっぱり人間って、とことんギリギリの状態にまで追い込まれないと、死力を尽くしてわざわざ現状を変えようとかいう気には、なかなかならないような気がするんだよな。


  特に僕なんかは人100倍の怠け者だから、相当とんでもないことが起こらない限り、自分からなんとかしようとして動くって方向には、なりづらいだろう。
 

  だからといって、わざと重病になるってのもそれはそれで難しいだろうしなあ・・・






いつものように、どうでもいいことを考えながら、掠め取ってきたピーチョコをボリボリ食べているうちに、知らないうちに時が過ぎて午後5時になり、夕方のニュースが始まりました。



そして、ぼーっとしながら画面を眺めてるうちに、いつのまにかCMが流れていました。






  誰だろうな、この若い男の人・・・


  たまーに見る人だけど・・・名前がわかんないな。




  それにしても、えらいイケメンでもてそうな人だよなあ。


  やたらスラッとしててスタイルもいいし。


  たぶん実際もてるんだろうな。

 
  でもって当然のようにやりまくりなんだろうなあああ。


  いいなあ・・・ 何てうらやましすぎる人生なんだ・・・




  やはりこういうのは前世の行いが良かったとか、そういうことなんだろうか。


  僕なんかS○Xどころかまともに女の子と話したことすら無いってのに、この差はいったい・・・


  僕もこんなふうに生まれてみたかったよ・・・




  ・・・いや、そんな大それた望みはいいや。


  せめて、女の子とふつうに友達になれる程度に、最低限の容姿であればそれでもう十分だ。 


  それ以上なんて絶対望まないよ。


  こんな毛虫さんだって避けたがるような、今の妖怪人間みたいな姿じゃどうしようもないもんなあ・・・








  いやいや、やめよう・・・ こういう不毛なことを考えるのは。


  もう全ては既に終わってるんだ。




  僕の人生なんてサッカーでいえば、残り時間1分切ってるのに、30対0とかで負けてるような状況だからな。


  あと数十秒でいったいどうやったら30点とれるんだよと。


  2秒以内に1点とって、それを30回なんて、ネオタイガーショットが使えたって100%ムリだよ・・・
  





イドムくんが毎度のごとくつまらないことで苦悩しながら、テレビの画面に意識を向けると、アナウンサーらしき人が、繁華街で道ゆく人たちに何かを質問していました。






  ・・・しかしテレビに出てる人達ってのは、エキストラとかも含めて、何でこんなにかっこいい人とかきれいな人ばっかりなんだろう。


  まあ、見た目がそんなに良くない人も多少はいるけど、そういう人達にしたって、僕なんかと比べたら、全然余裕で、自信もって人前に出れる水準なわけだしな。


  やっぱり世の中、何だかんだ言っても結局、見た目は重要なんだろうなあ。


  そりゃあ誰でも汚いものよりは、きれいなものの方が好きなのは当然だろうから、しょうがないといえばしょうがないんだが。


  今さらこんなこと悩んだって、意味なく疲れるだけなのはわかってるけど、やはり落ち込むよなあ。



  ・・・って、今度は容姿のせいにする気ですか、このクズは。


  自分の努力不足とか怠け癖や甘えを棚に上げておいて、それはあまりにも自分をかわいがりすぎだろう・・・


  








  でも現実問題として、こんな僕みたいな感じで、見た目が限りなく最悪に生まれちゃって、しかもそれ以外の能力も、全て底辺レベルっていう人は、いったいどういうふうに生きていけばいいんだろうな・・・


  欠点を長所でカバーすればみたいな話はよく聞くけど、僕みたいに長所が何一つないのに、欠点だけは売るほど搭載されているやつだって世の中にはいるわけでさ。




  どう考えても自殺するしかないと思うんだよな、こういう場合は・・・ それもできれば人生のごく初期の段階で。


  37年間探し続けてきたけど、どう考えてもそれ以外に現実性のある選択肢は皆無のような気がするんだよ。


  まあ、僕と同じような悲惨な条件で生まれちゃって、それで自暴自棄になって、周りにどんな迷惑をかけてもいいから、とにかく何が何でも贅沢をして、おもしろおかしく暮らして長生きしたいっていう方向に行く人も、もしかしたらいるのかもしれないけどさ。




  別にそういう生き方を否定する気なんてもちろん無いけど・・・


  僕のような無能ごときに、他人を批判したりする資格なんてあるわけないことくらいはわかってるし。


  とりあえず僕にはそういう強気な生き方は絶対にムリだ。 


  そこまでの度胸というか強靭な精神力は無いよ。


  そもそもそこまで、いい意味でず太い神経があったら、ここまで見事に苦悩と絶望だらけの最下層人生になんて堕ちてないだろうしなあ・・・








  しかし・・・


  こうやって毎日毎日悲劇のヒーローを気取って、ただ絶望感に浸ってるヒマがあったら、お父さんとお母さんに親孝行をする方法をちらっとでも考えてみろってんだよな。




  とは言っても、現時点で僕が実行可能な最大の親孝行は、自分で自分を最高最速で処刑することなんだよなあああ。




  結局またふりだしに戻る、か・・・




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